神の物差し、ヒトの物差し

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 人気のなくなった店内に、テレビの中の笑い声だけが響いている。恐らく志津真セレクトだろう情報番組では名物司会者がゲストを弄って笑いを取っているところで、内容はなんてことない、芸能人の破局だとか、そういうところだ。  やがて志津真がマノギを引きずって帰ってくる頃には、その情報番組も終わって夕方のニュースが始まっていた。この近くで頻発していたひったくりが、勇気ある大学生の手によって逮捕されたらしい。 「へえ、この人君の大学の人間じゃないかい?」 「え? うそ、……ホントだ。伊織くんって、同じ学部の人だよ。たまに話すけど……どっちかっていうと大人しい感じの人っぽいんだけど、へぇ、凄いね」 「大人しい? どこが大人しいのかえ。こなたにはそう見えぬがな。この男腹の中身は相当黒いぞ」  警察署の署長に感謝状を貰ってはにかんでいる青年は、よく講義で見かける彼そのものだった。時折図書館で本を読んでは寝こけている姿からはなかなか想像がつかない武勇伝をもってしまったらしい。 「えー? 伊織くん見た感じすごくいい人だけど。ていうか、そもそもマノギ様どこで油売ってたの」 「なに駅前商店街のトメがな、こなたを見るや否やコロッケを食べて行けとうるさいものでの」 「夕飯食べられなくなっても知りませんからね」  細い見た目に反して食い意地の張っている土地神に一瞥くれて、司はふいと扉の方を見た。ちりん、と扉に付けられた鈴が控えめな音を奏でる。
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