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「オレンジジュースでいい? それとも紅茶?」
「あ、いえ私……あの、ご相談があって」
「斗貴さんの紹介でしょ? そういう人には一杯ごちそうしてって店長から言われてるの。遠慮しないで」
斗貴さんというのは、この店を経営しているオーナー兼店長の女性である。他にも幾つかの飲食店の経営や怪しげな占い師じみた仕事も請け負っているため、こういうお客は少なくない。
注文されたアイスティーを淹れながら、司は少女の格好をもう一度軽く眺めてみた。制服は麻野木第三中学、このすぐそばにある中学校のものだ。そんな少女が店長に占いを頼んだとは思えないが、そこは何か理由があるのだろう。
「えっと、斗貴さんからはなんて言われてここに来たの?」
出来るだけ相手を怖がらせないように、極力優しい声を作ってみる。司も自分の声が同年代の女性と比べるとやや低めであるという自覚はあるので、接客時は少々声を高めに作るようにしていた。
「その……探し物をしていたら女の人に呼び止められて、ここに行くようにって。名前を出したら話を聞いてくれるからって、名刺も……」
普通中学生に名刺渡すか。
相変わらず自分の気の向くままに生きている店長を思い浮かべて、司は何とも言えない笑みを浮かべた。彼女は下手をすれば、このマノギよりも自由人だ。
「探し物って、一体何を探していたのかな。ここに来たところで俺達が何かできるとも思えないんだが……」
「え、えぇっ! そうなんですか……?」
何をどうしようもない。そういう志津真の言葉に、少女が声を上げた。
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