神の物差し、ヒトの物差し

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「そうなのもなにも、何を失くしたのかを言ってもらわねばな、こちらとて何を探せばいいのかもわからぬ。まずそなたの名を名乗りや」  椅子に背を盛られさせる形で立ちながら、マノギは少女にそう問うた。他人が見れば偉そうなことこの上ない口ぶりと姿勢だが、それでも少女はじっとカウンターの木目を見ながら名前を答える。声は、先程よりはしっかりした響きを持っていた。 「齋藤、嘉穂です」 「嘉穂か……して、何を失くした」 「水色の髪留め、を。プラスチックの装飾の中に、星形のビーズがいくつか入ってます。遠くに引っ越した友達からもらった、大切な物なんです。それがこの前の、学校の炊事遠足で失くしてしまって……物自体はありふれたものなんですけど、なかなか会えない友達にもらった本当に大事な物、で」  それからぽつぽつとその髪留めについての思い出を語り始めた嘉穂だったが、話を振ったマノギは早々に飽きてしまったらしい。テレビのお笑い芸人にその興味を移し始めた彼の代わりに、司と志津真が相槌を打ちながらその話を聞く。 「その炊事遠足って、どこに行ったの? この近く?」     
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