神の物差し、ヒトの物差し

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「隣町の、蔵越山です。学校に行くときはあったのに帰ってくるときにはもうなくなってて……山の中に落としたんなら探しようもないし、でもどうしてもあきらめきれなくて」 「蔵越山か。なるほどそう高くはない山だけど……広いね。ハイキングルートでもかなり歩くだろう」  午前中から歩き始めても、正午には頂上に着くほどには歩きやすい山だが、それゆえに人の出入りも激しい。特にこの季節はハイキングルートの脇に花も植えられて、写真や登山が趣味の人間も多く訪れている。そういった人々に拾われていても、なんらおかしくはないだろう。 「もうだめかなって思ってた時に、斗貴さんに出会ったんです。それでこの店にって……都ノ塚さんって人が探してくれるからって」 「え、いや都ノ塚は私ですけど……」  勝手に名前を使われたあげくに探すとまで約束させられてしまった。  藁にも縋るような思いでこの店にやって来た少女を追い返すような真似は出来ないが、それでもひどく面倒なことを押し付けられてしまったと溜息をもらすくらいは許されるだろう。  どうしたものかと首を傾げる志津真の向こう、お笑い番組を見詰めるマノギに、司は声をかけた。 「マノギ様も黙ってないで何とか言って下さいよ」 「ふむ、よかろう。その髪留め探してやろうぞ。蔵越には知己がいる」 「え、マ、マノギ様?」     
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