神の物差し、ヒトの物差し

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 夕暮れの寂しげな時間が終わると、当たりの雰囲気も一気に寂しげな物へと変わる。この時間に客がいないとなると、後は八時半の閉店まで誰も来ることはないだろう。諸々の雑事を片付けても九時には上がれると踏んだ司は、冷蔵庫に入っている緑茶をグラスに開けた。 「マノギ様、無責任にあんなこと言っちゃってどうするんですかぁ」 「なに心配は要らぬよ。芦雪(ロセツ)という大鴉があの辺りに住んでいてな、五百年ほど前に世話をしてやった。それに志津真の水鏡があれば、失せものなど探すのは容易であろうて」 「勝手に人の力をアテにするのはやめてくれるかい……? いや、確かに探すのはそう難しいことでもないんだがね」  テレビのリモコンを取ってチャンネルを天気予報に変えると、マノギからやめろと抗議が飛んだ。あれで真面目に見ていたらしいが、志津真はそんなことお構いなしに予想天気図に目を向ける。 「三日後に雨。このところ晴れが続いていたから、俺も少々疲れていたんだよ」  降水確率九十パーセントの予報を見つめた志津真はにっこり微笑み、口を尖らせるマノギにチャンネルを返してやる。雨が上がるはずの四日後――つまり土曜日が、嘉穂の探し物を探すその日に決定した。
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