神の物差し、ヒトの物差し

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 予報通りの土砂降りの金曜日が明け、土曜日。離れの縁側に溜まった水たまりに顔を映す志津真の姿が朝から見受けられた。朝食を作り終えた後なのか、水色のエプロンをつけている。 「おはよう志津真さん……あ、嘉穂さんの髪留め探すの?」 「うん、久しぶりだからどうにも勘が取り戻せているかどうか不安だったんだけれど、上手く映ってくれたみたいだ。見てごらん司」  寝間着代わりのTシャツ姿のまま、司はサンダルをつっかけて志津真の隣に陣取った。昨日降った雨が作り上げた水たまりが、静かに渦を巻いている。  志津真が水神としての力を使う所を見るというのは、司もあまり機会がない。権限と能力の殆どを剥奪された志津真は今、神としては絞りカスのような存在であると自称していた。 「おう志津真よ、失せもの探しは捗っておるかえ?」 「おはようマノギ。今から覗いてみようかなって思って」  志津真が渦を巻く水たまりを指さすと、マノギも司の隣にやってきて同じく水たまりを覗き込む。志津真が使うのは、水を媒体にして任意の場所を覗き込むことができる水鏡だ。 「えぇと、齋藤某の髪留めを示したまえ。おおよそ場所は蔵越山だそうだから、そこを重点的に頼むよ」     
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