神の物差し、ヒトの物差し

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 蔵越山の大鴉、芦雪というのは、マノギ同様土地を守る地霊であるらしい。五百年前に翼が傷つき麻野木の地に落ちてきたところを介抱してやったとマノギは言っていたが、それが真実かどうかはその芦雪に直接聞かねばわからないことだ。  電車に乗って山のふもとまでやって来た司は、志津真とマノギそれぞれの顔を見合わせて首を傾げる。 「マノギ様、その芦雪って神様はどこにいるんですか?」 「頂上から呼べば顔を出すであろう。どこにいるかははてさて、とんと見当がつかぬ。ここは麻野木ではないからの、探すにしたってこなたの力も及ばぬのよ」  そう標高の高い山でもないので、ハイキングルートをしばらく歩けば頂上に辿り着く。  早速整備された道を歩いていくと、丁度下山してくる人々とすれ違う。マノギの容姿が珍しいのか、何人かの女性は彼をじっくり眺めてから顔を寄せ合った。 「マノギ、大丈夫かい?」 「なにを今更。髪が白いことが気になるのならばもう慣れたわ。それより司、そなたは大事ないかえ? 女人の身で山を登るは辛かろう」 「それこそ今更ですってば。別にこれくらいなら登ったことありますし」     
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