神の物差し、ヒトの物差し

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 そう言ってリンを鳴らして手を合わせる。写真の中で笑っているのは、六年前に他界した彼女の両親だ。記憶の中の二人も、隣の母屋に住んでいる伯母から聞く話でも、両親はいつでも笑っていたらしい。いつもと同じように手を合わせた後、司はまた立ち上がって写真に向かって手を振った。 「それじゃ、行ってきます」  そう言ったところで仏壇から返事が返ってくるわけでもないし、返ってきたとしたらそれはそれでなかなかの恐怖体験だ。それでも二人がいなくなった時から行ってきた習慣を変えることは、恐らくないだろう。まだのんびりと食事を続けているマノギと経済のニュースを見ている志津真の横をすり抜けて、茶の間を抜ける。すると背後から志津真の声が追いかけてきた。 「そういえば今日、バイトには行くのかい? 俺とマノギは今日と明日頼まれてるから、帰りが遅くなるけど」 「えーと、うん。今日は四時から九時まで。二人いるんなら一回帰ってきて、原付置いてくよ」 「そう。帰りに浅香さんから買い物を頼まれてるから、ついでに寄っていこうか。それでいいねマノギ?」 「うむ? こなたは一向に構わぬが――しかし面倒よな。いっそ空でも飛ぶか」 「空飛ぶ人間としてゴシップ誌にスクープされたいなら好きにすればいいさ……」     
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