神の物差し、ヒトの物差し

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家に神様が二柱という現状にも司はもう慣れてしまったし、彼らは別に信仰を強制してくるわけでも家にある仏壇を目の敵にしているわけでもない。クリスマスにはチキンも食べるし頼まれればバイトにも顔を出す。元人間のマノギからしてみれば、神と人の垣根などそう無理に気にするものでもないらしい。 「あ、もう時間なんで、今日はお暇します。また明日の朝お掃除しにきますね」  もう一度祠に軽く手を合わせて、司は原付を止めてある林の外側に出た。既に太陽はその光を強くしており、朝の涼しさはどこかに消えてしまったようだ。  大学に着くまでにいくらか考える。内容はおよそ今晩の夕飯がオムライスだとか、バイトのシフトだとかの他愛無いことではあるが――見ないようにしていたカレンダーを思い出して、司は溜息をついた。涼やかながらも僅かに乾いた熱を孕んだ風が、夏の訪れを告げている。
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