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星におかしなまじないを
星見の塔には近寄ってはならない。この町の子供達は皆そう教わって育っている。塔の近くで遊ぶことも、ホウキで近くを飛ぶことも禁止だ。
魔物が棲んでいるだとか、怖い魔法使いが実験をしている。それに、幽霊が現れる。理由は様々なことが言われていて、どれが本当のことなのか今ではすっかりわからない。
けれど、不気味な獣の声が聞こえていくる。そんな噂は時折囁かれていた。
ササラもその教えを聞いて育ったものの一人だ。
この時期はお菓子の注文が多くて、ホウキで飛ぶことのできる歳になってからはササラも手伝いに借り出されている。家族経営のパティスリーだから猫の手も借りたい状況なのだろう。ササラも手伝えることがあるならと、文句を言わずに手伝っていた。
ただし、今日はやけに注文が多かった。一度戻ってきたのに再度出かけるはめになった程だ。文句の一つも言いたくなったが、忙しそうに駆け回る両親の姿を見ればそんなことは言えない。
「悪い、急ぎのものはないから!」
父はササラを送り出しながらそう言っていた。ササラがホウキに乗って再度飛び出した時なので、もしかしたら聞き間違えている可能性もあるが。
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