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普段通りに飛ぶと星見の塔を避ける遠回りの道のりだ。星見の塔の近くを急いで通り抜けさえすればかなり時間は短縮できる。
星見の塔の周りを成人するまでは飛んではいけない。近付いてもいけない。これがこの街の約束だ。
ぷかぷかとホウキに揺られながらササラしばらく考えた。風で少し揺れるホウキはササラの決断に焦れている様でもある。そして
(あと半月で成人だから、大丈夫!)
ササラは結論を出すと宙空を滑るように動き出した。
十八歳の誕生日は来月なのでもう大丈夫だろう。ここまでくれば誤差だ。四捨五入すれば届くなんてものじゃない。
ごちゃごちゃ頭の中では屁理屈をならべているが、実際のところは一日飛び回って疲れているので早く帰ってお風呂に入りたい。その一心だ。
とはいえ、星見の塔に近付くことは初めてだ。柄を握っている手に汗が滲んでいる気がする。
急いで飛びぬけるつもりなので、ぶら下げたカンテラの火を消しておく方がよかったかもしれない。バレたら怒られるかな。でももう成人だから大丈夫だよね。塔に住んでる魔物や幽霊が出たらどうしよう。
頭の中の屁理屈がどこかに去ると、今度は不安が占拠し始めた。ぐるぐると様々な言葉が巡っていく。
ホウキを強く握り締めて、星見の塔へと差しかかった時だ。ふわりといい匂いがササラの鼻をくすぐった。
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