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「あれ、甘くて美味しそうな匂いがする」
ササラは自分の声が出たのかと思ったが、全く違う声だったのですぐに違うと気がついた。そして今度は見つかった! とホウキが跳ねた。
咎める言葉も続いてこない。おかしい、一体誰? とホウキの柄を握りしめながらゆっくりと首を動かして、固まった。
星見の塔の窓が開いていて、そこから銀髪の青年が顔を出している。
向こうもこちらに驚いているらしい。目を丸くして、何度も瞬いている。彼のラベンダー色の瞳は中の光が反射してとても煌めいていた。
「……えっと、魔女さんこんばんは?」
「こ、こんばんは?」
お互い何故か疑問符をつけて挨拶をしてしまっていた。
少なくとも魔物や幽霊の類には見えない星見の塔の青年のやわらかな笑みに、ササラはホウキを握り直して会釈を返した。
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