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そうしてササラは今、近寄ってはならないとされている星見の塔の中へと招かれていた。
「へぇー。じゃあ、ササラは学生さんなんだ」
「あ、はい」
「それじゃあリゲルは知ってる? 君と同じ学園じゃない?」
「リゲルくんなら有名ですよ」
「へぇ……あの堅物坊ちゃんがねぇ」
アルグルと名乗った青年は魔法で高く浮かせたポットからカップへ、跳ねさせることなく紅茶を注いでいる。昔街へ訪れていた曲芸士の腕前にも劣らない程だ。
さぁどうぞとササラの前に紅茶が置かれ、パンプキンパイも並べられる。二切れだけ持ってくるのもおかしいかと思い、ホールにしたけれど流石に二分の一ずつはおかしい。
「あの、あと三等分にしてもいいですか? その一切れあれば十分です」
「そんなに少なくていいの?!」
「まぁ時間も時間ですし、夕飯も食べた後なので」
「そっかぁ……。じゃあこれは残りは有難く僕が頂戴することにしよう」
ササラの皿の上からきっかり三分の二を切り取って、アルグルは自身の皿へと移した。今食べるつもりらしい。
いただきますと言った彼はフォークをパイへと突き刺すと、一口にしては大きすぎる欠片を口へと運んでいる。そのまま入るのだからササラは感心してしまった程だ。
「あの、アルグルさんは」
「あるぐるでいーよ?」
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