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猛臣の熱い主張に、なんて前向きなのだろうと尊敬の念すら覚えた。命の危機さえ覚えるような状態に置かれても、颯也を死なせてはならないと己を奮い立たせ道を切り開き進むというのだ。
そういう意味では、婚姻の契りは確かに強い絆になっているのだろう。颯也の存在こそが猛臣の生きる理由になっているのは間違いない。
「言いたいことはわかるけど、俺の気持ちは?」
「颯也、それは」
「命を拾ってもらった恩はあるし、王としての志や決意は立派だと思う。どうしても残って欲しいというのなら……考える。でも、俺達の関係に愛情があるなんて言われても、それはちょっと違うよ」
ほんとうは、猛臣の腕に囚われていることが嬉しいのに颯也は必死にその気持ちを隠そうとした。狡いと思ったからだ。
どんなに頭の中から追い出そうとしても、恋人だった猛臣の影は消せない。目の前の猛臣に対して好意を感じたとしても、結局は根底にはもうひとりの猛臣がいるのだ。
本気で愛を囁く者に対して失礼だ。どうしても、颯也から猛臣にふれることはできなかった。
「そうだったな、すまない。俺が一方的に颯也を愛しているだけなのに、いきなり愛以上の繋がりと言われても困るよな」
「うん、まぁ……」
「颯也の気持ちを強要するつもりはない。俺のことを、嫌いというのならそれも仕方のないことだ」
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