117

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「そういえば、時報さんの話知ってる?」  Aがファミレスでポテトをつまみながら切り出した。 私も適当に相槌を打つ。 「何それ? ジホウって、117の?」 「そうそう、その時報」 「まだあるの? 今時」  時間なんて、時報に電話をするためのスマホさえ見ればわかることだ。 とっくにサービス終了していてもおかしくないと、そのときの私は思った。 「そりゃ数は減ったけど、今でも年間7~800万くらいのコールはあるんだよ? 天気予報の177よりも数は多いんだから」 「えー、ほんとに?」  信じられなかった。  どちらにも掛ける機会はなくなったが、どちらか選べと言われたら天気予報だ。 なぜわざわざ電話をしてまで時報なんか聞く必要があるんだろう。 「気になるでしょ。その理由、こないだ同僚に聞いたんだ」 「なになに?」 「まず前提として、117に電話すると、掛けっぱなしにしても大体6~12分で通話が切れるようになってるのね」 「ああ、無限に繋がっちゃうとイタズラとかに使われそうだもんね」 「それでね、あの時報のアナウンスって10秒置きなのよ。だから、12分後に切れたとしたら単純計算で72回、あのアナウンスが聞けるの」 「何時何分何秒をお知らせします、ってやつね」 「そうそう」  子供のころ、興味本位で掛けたことを思い出した。 延々と続く無機質な声が妙に怖かったのを覚えている。 「だけどさ。たまに、繋がりっぱなしのときがあるらしいんだ」  Aが真剣な顔で続けた。 「もしそうなったら、普通だと72回しか聞けないアナウンスを117回まで聞けるようになるの。 で、117回目のアナウンスのときにね、女の人がしゃべり終わったあと、次のアナウンスが始まるまでのあいだに話しかけるんだって」 「自動音声相手に?」 「ううん、時報さん。ちゃんと次のアナウンスまでに話しかけられたら、時報さんが答えてくれるの」  いわゆる都市伝説という奴だろうか。 しかし、私は半信半疑だった。 誰かが面白半分で言い出したガセに聞こえる。 「あ、信じてないでしょ? こないだ会ったジムの友達もやったんだから。ちゃんと出たんだって、時報さん」
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