第八話

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第八話

――第三次アルストニア攻略戦は、開戦から半年後に終結した。 勝者は、またもアルストニア。しかし、今回は危なかったようだ。 帝国軍は数で勝る上に、魔道砲という新たな武器を導入していたのである。それによる被害は甚大で、町がいくつか破壊された。 そうして進軍していった帝国軍とアルストニア軍は、後に夜明けの平原と呼ばれる場所で衝突する。 剣が打ち合わされる音が響き、魔法の光が飛び交う。魔術師団の赤い制服が翻り、次々とアルストニアの兵士が倒れた。 今度こそ勝てる、と帝国軍が勢い付きだした頃、戦況は一変した。 晴れ渡った空に唐突に雲が広がったかと思うと、大粒の雨が振りだしたのだ。さらには、立っていられないほどの強風が吹きすさび、耳を(つんざ)く雷鳴が轟いた。まさに、大嵐である。 それは自然のものではなく、アルストニア王ユリウスと、王太子ダレスによるもの。故に、アルストニア軍はまったく影響を受けない。 雷が直撃した魔道砲は使い物にならなくなり、帝国軍はじりじりと後退させられた。そうして終いには味方が何処にいるのかも見失い、撤退を余儀なくされたのだった。 王太子ダレスはそれを徹底的に追わせ、帝国軍を国境へと追い返したのである。 魔力も体力も尽きた帝国軍は、そのまま降伏を表明した。皇帝は迷いながらも、休戦協定に調印する。 期限は6年。 今まで以上の犠牲を払った皇帝の心中は、誰にも推し量れないまま、時間だけが過ぎていった……。
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