第八話

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「こんにちはー」 カランカラン、と軽やかなベルの音と共に扉が開かれた。 入ってきたのは一人の少女。艶のある黒髪が肩のあたりで揺れ、大きな茶色の瞳は元気一杯に輝いている。 そんな少女を出迎えたのは、部屋の奥のカウンターの向こうに座っていた女性。 袖の膨らんだ紺色のエプロンドレスを着ており、腰ほどまでの明るい茶色の髪は、首の後ろで緩く結んである。 少女と目が合うと、泉のように澄んだ青い瞳が、柔らかく細められた。 「いらっしゃい。いつもの薬ね?」 「はい。お祖母ちゃんの」 「そこに座って待っててね」 少女に椅子を示して彼女は立ち上がると、背後の棚から水色の液体の入った瓶を手に取った。 続いて、カウンター下の引き出しから、乾燥させたカユム草を取り出すと、瓶の中身と共に鍋にかける。 それがクツクツと煮え出した頃、今度は少し離れた別の棚からクチナシの実をとって来て磨り潰し、鍋に投入した。 少女はその様子を、足をパタパタと動かしながら、楽しそうに見つめている。
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