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指を振って、お茶をギルバートの前に運ぶ。空中でそれを受け取ったギルバートは、ありがとうございます、と言って口に含んだ。
ふぅ、と吐息を吐くギルバートの右隣に座り、セシリーは笑った。
「――楽しそうね」
不意にそう言ったセシリーに、ギルバートはキョトンとする。
「楽しそう、ですか?」
「何ていうか、生き生きしているわ」
ギルバートは、ふふふ、と嬉しそうに笑うセシリーに対し、苦笑を浮かべた。
「ダレス様にも似たような事を言われましたよ。今の方がよっぽどいい、と」
「王太子殿下は真っ直ぐな方ですものね。笑って何かを隠しているような人は、きっと嫌いなのでしょう」
一度だけ、セシリーはダレスに会った事がある。エリヤス付きになった挨拶に、国王を訪ねた際に。
丁度その時、王に献上しようと持って来ていた薬品を、ダレスは正直に褒めた。口調は優しくは無かったが、セシリーには嬉しかったものだ。
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