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「ねぇ、ギル?」
「何ですか?」
しばらくして、目を閉じたままセシリーはギルバートを呼ぶ。呼んですぐに返事が帰ってくる事が、セシリーの喜びだ。
「わたくしね、とても幸せなの。大好きな魔法薬作りを一日中していられて、大好きなあなたが隣にいてくれて」
「私は二番目ですか」
「偶々よ。拗ねないで」
ふふ、と笑って、目を開ける。間近で自分を見つめる鳶色の瞳を見上げ、自分が映っているのが嬉しくて、再び笑った。
凭れていた体を起こし、握られたままの手に自分の右手を重ねる。
「もう少し黙っていようと思ったのだけど、しょうがないから教えてあげる」
「何をですか?」
少し戸惑ったような顔に浮かぶのは、不安だろうか。今の方が、やっぱり表情が分かりやすい、とセシリーは密かに笑った。
「あのね。来年の今頃には、家族が増えているようなの」
「そうなので……、え?」
目を白黒させているギルバートに、セシリーは悪戯が成功した時の子供のような、キラキラとした瞳で微笑んでいる。
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