第八話

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「ねぇ、ギル?」 「何ですか?」 しばらくして、目を閉じたままセシリーはギルバートを呼ぶ。呼んですぐに返事が帰ってくる事が、セシリーの喜びだ。 「わたくしね、とても幸せなの。大好きな魔法薬作りを一日中していられて、大好きなあなたが隣にいてくれて」 「私は二番目ですか」 「偶々よ。拗ねないで」 ふふ、と笑って、目を開ける。間近で自分を見つめる鳶色の瞳を見上げ、自分が映っているのが嬉しくて、再び笑った。 凭れていた体を起こし、握られたままの手に自分の右手を重ねる。 「もう少し黙っていようと思ったのだけど、しょうがないから教えてあげる」 「何をですか?」 少し戸惑ったような顔に浮かぶのは、不安だろうか。今の方が、やっぱり表情が分かりやすい、とセシリーは密かに笑った。 「あのね。来年の今頃には、家族が増えているようなの」 「そうなので……、え?」 目を白黒させているギルバートに、セシリーは悪戯が成功した時の子供のような、キラキラとした瞳で微笑んでいる。
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