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「それはつまり……、本当ですか?」
「ええ。わたくしたちの赤ちゃんよ。今朝分かったの」
そう告げたセシリーに、ギルバートは今にも泣き出しそうな顔で笑った。セシリーは微笑みを浮かべたまま、ギルバートの顔を覗きこむ。
「うれしい?」
「それは、ええ。もちろん。ありがとうございます、シシー。とても、幸せな気分です」
「楽しみね」
「はい。私は、こんなにも幸せな事を、手にいれもしない内に、捨てようとしていたのですね」
「そうよ。困ったものだわ」
「ええ、本当に」
頬を膨らませる姿に苦笑しながら、ギルバートはセシリーを抱き寄せた。
ギルバートを、一人ぼっちの世界から救ってくれた温もり。セシリーから貰ったその愛が、ギルバートにとってただ一つの、愛しい宝物。
「……愛しています、シシー」
「わたくしも、愛しているわ、ギル」
どんな宝石にも勝る輝き。自分の生きる意味。それをギルバートは、ようやく手にいれたのだ。
――完――
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