6人が本棚に入れています
本棚に追加
(2)
小学校の私は引っ込み思案で、今と比べるとだいぶ内に閉じこもったような子だったと思う。
だから……音楽会とか……
そういう、人前に立つような行事は大の苦手だった。
「咲ちゃん、いい声ね」
歌の練習のとき、音楽の花先生に声をかけられた。花先生はおばあちゃん先生だった。おっとりしてて、優しくて……それにうちのハナとおんなじ名前。
「ちょっと咲ちゃん、その部分、ひとりで歌ってみて?」
そう言ってピアノを弾き始める。
花先生はピアノも優しかった。
だから、私は花先生のピアノに委ねて好きなように歌ってみた。
歌い終わると、花先生は言った。
「やっぱりお上手」
花先生は小さく拍手をする。
嬉しかった。何でもそうだが、褒められると気分はいいもんだ。
そんな様子を見ていたのか分からないが、花先生はすかさず提案してきた。
最初のコメントを投稿しよう!