ふたりのハナへ贈る歌

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(2) 小学校の私は引っ込み思案で、今と比べるとだいぶ内に閉じこもったような子だったと思う。 だから……音楽会とか…… そういう、人前に立つような行事は大の苦手だった。 「咲ちゃん、いい声ね」 歌の練習のとき、音楽の花先生に声をかけられた。花先生はおばあちゃん先生だった。おっとりしてて、優しくて……それにうちのハナとおんなじ名前。 「ちょっと咲ちゃん、その部分、ひとりで歌ってみて?」 そう言ってピアノを弾き始める。 花先生はピアノも優しかった。 だから、私は花先生のピアノに委ねて好きなように歌ってみた。 歌い終わると、花先生は言った。 「やっぱりお上手」 花先生は小さく拍手をする。 嬉しかった。何でもそうだが、褒められると気分はいいもんだ。 そんな様子を見ていたのか分からないが、花先生はすかさず提案してきた。
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