ブルース・リー再生計画

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 もともとリーは身体と精神の合致をみていた存在だから、この研究の目標としてはふさわしいものだったと。心身一致を体現しているのだから、体を再現すればおのずと心も再現されるのです。もとより体を通して心を鍛錬するというのはごく当たり前のことではないでしょうか。というより、心が体と離れて別々に存在しているという考えは否定されなくてはいけないと、我々は考えています。これ以上哲学的な話に踏み込むわけにはいきませんので、質問をどうぞ。  リーを選んだのはもうひとつの理由として、何と言っても有名ですからね。研究費集めやすいってこともありました。世界中から集まりましたよ、もちろん。額は秘密ですが。  考えてもみてください。同じ川に入ることはできるか、という命題がありますよね。川の水は流れているから、入るたびに、また入っていても、常に違う水にさらされているわけです。しかし、水は違っても、存在としての川は同一とも考えられるわけです。行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず、ですが、川としては水が絶えなければ元の川です。  我々はクローンを作って事足れりとしているのではないのです。  そう、仮にクローンを育てたところで、育てている間に違う人間になっていくからです。一卵性双生児は遺伝子が元は同じだけれど育っていくうちに別々の人間になるようなものですね。あるいはクローンの猫を作っても、発現する毛皮の柄はばらつきが出るようなものです。     
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