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第1話 楽宴
ヴェンティトレの塔には鬼が棲みついている。
それは世にも恐ろしい喰人鬼。
毎晩、罪のない人間を喰い殺す。
塔に連行されたが最期、戻ってはこられない。
決して行ってはならない処。
それが、ヴェンティトレ。
※
陽は沈み、夜空には無数の星がきらめいている。
数刻前まで激しく吹き荒れていた、冷たい風はいつしか止んでいた。
大きな岩山の頂上には、石造りの神殿がそびえたっていた。
まるでギリシャ・パルテノン神殿を思い起こさせる神殿前に、扇状の野外劇場が広がる。周囲に立てられた無数の松明が静かに燃え盛る。一般人の立ち入りは禁止されているにも関わらず、夜の野外劇場には多くの人々であふれかえっていた。中央に設置された演舞場に大勢の視線が注がれる。
舞台上には、女たちがいた。
皆、そろって若い。
煌びやかな衣装に身を包み、楽器を手にしている。
横笛、篳篥、手鼓、ひちりき、げんかん、琵琶。
どれも東洋の楽器ばかり。優雅に艶やかに楽器を鳴らしては、微笑みを振りまき軽やかに踊りまわる。
女だけで構成された一団の名を、ベール歌舞団と云った。
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