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一五人の演者たちの姿は皆、まるで天女の様で。観衆たちは手拍子もすることなくただ静かに座して、天女たちによる夜の《楽宴》を鑑賞していた。
しかしである。
突然に異変が起きた。
一人の老人が苦しそうに両耳を押さえ出しうずくまった。
よくよく見れば、その耳、眼、口から血がドプリと噴出している。
短く絶叫するや、老人はバタリと仰向けに倒れた。
既に、息絶えていた。
周囲から悲鳴が上がる間もなく、異変は他の観衆たちにも伝染していく。これ以上曲を聴くことに耐えられずに、耳を塞ぎだす。ガタガタと身体は震えながら、夢遊病患者の如く辺りをさ迷う者さえも。
それでも、ベール歌舞団の女たちは演奏を止めなかった。
まるで桃源卿にいるような幸せそうな顔で楽器を鳴らし、天女のように演舞場で踊り続ける。その間も、人びとは発狂し次々に死んでいく。
やがて、永遠に続くかと想われた演奏は終了した。
千人近くいたであろう観衆のほとんどは死に絶え、その場に生き残った数は百人にも満たない。しかも生存者は皆子供ばかり。彼らは地獄絵図さながらの光景を目の当たりにショックを受けたのか、半ば放心状態にある。体育座りの姿勢で居続けるだけだった。
「にんげん……おおぜい、しんだ」
ポツリと擦れた声が響いた。
少女の声。
黄金に輝く琵琶を携え、七色に輝く羽衣の衣装をまとう。
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