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頭には布製の被り物を。
外見から、年齢は九歳ぐらいだろうか。あどけない顔はまさに天女そのものだった。
「沙羅様。お疲れ様でございました」
一際妖艶な姿をした年上の女が、沙羅と呼ばれた少女に近づてくる。歌舞団を率いる団長だった。沙羅をまるで自分たちの女神であるかの様に、特別扱いしている。
「とりあえず、これにて儀式は終了いたしました」
「うん。いっぱいしんじゃったね」
「予想以上の死者でございました。されども、《黒天使》と成りうる素質を持った人間は一握りだと聞いておりますので」
それを聞いた沙羅は、辺りを悠然と見回した。
「そう……なの?」
「書物に記された通りに、皆で《英雄の翅》を演奏しましたが……まあ、これだけ残れば」
「いきのこった……こどもがおおいね」
沙羅は震える声でたどたどしく指摘した。とても長い間、他人と会話をしてこなかった為、思うように声が出てこない。一語一語振り絞るように、ゆっくりと喋っていた。
「まだ成熟していない子供の方が《黒天使》に向いているのかと推察されます」
「これが、《黒天使》なの?」
「左様でございます」
「でも、はねがない。あまり……かわっていないよ」
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