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 改めて思い返すと、千里と会うのは4ヶ月ぶりだった。そんな隔たりを感じさせない存在が彼女で、もう知り合って20年以上が経つ。 千里のことを一言で説明するのは難しい。「幼馴染」で「親友」の彼女だが、どちらの言葉も彼女を表現するには少しずつ足りない。誤解を恐れずに言えば、私にとっての「大事なひと」だ。けれど、その彼女も3年前にめでたく結婚し、ゆっくり会えるのも数ヶ月に1度になってしまっていた。 「茉莉」  22時半のファミレスに駆け込んできた彼女は、スウェットワンピースに厚手のストールを羽織っただけの恰好で、急いで来てくれたことがよくわかった。案内も待たずに私の隣の席に滑り込むと、人目もはばからずしっかりと私を抱きしめてくれた。風呂上がりの石鹸の香りがして、申し訳のなさが胸をつく。 「大丈夫?」 「うん、ごめんね…久々に会ったのに、こんな話持ち込んじゃって…」 「いいの。私も会いたかったの。何か頼んだ? 温かいもの飲もうか」  充分に目立つやりとりのおかげですぐにやってきた店員に、彼女はドリンクバーとスープ、ケーキ数種類を頼むと、そのまま席を立ち、温かいカフェオレ2つを手に戻ってきた。そのうちひとつに砂糖を放り込み、てきぱきと私好みに仕上げると、ぐっと手元に差し出してきた。  その仕草に促され、私はようやく話を切り出した。 「薄々、おかしいなとは思っていたんだけどさ…」 話し出すと、思った以上の悲しさが喉元に突き上げてきて、思わずカップを握りしめた。30にもなろうとする女がこんな風に泣くのはみっともない。そう思っても、嗚咽がとめられなかった。
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