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『やなこった』
一緒に出掛けようという私の誘いを、辰巳は一刀両断した。
『お前、どこ行くつもりだよ』
(え、まずサロンで髪とフットネイルしてもらって)
『それから?』
(新しい下着買って、服もみて)
『………………で』
(映画でも行こうかなって……)
『何観る気だ』
ここでラブコメだと言ったら、殺されそうだった。
(……すみませんでした)
『おう』
確かにこの予定なら、私ひとりで行った方がよさそうだ。どうして彼に声をかけようなんて思ったのか、今更恥ずかしくなってきた。私の動揺が透けて見えたのか、哀れむような口調で辰巳が言う。
『お前でも、心細くなるんだな』
(そうね……)
『でもな、悪いことは言わん』
ひとりに慣れとけ。
そう言い置いて、辰巳は気配を消した。
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