6

2/2
前へ
/27ページ
次へ
『やなこった』  一緒に出掛けようという私の誘いを、辰巳は一刀両断した。 『お前、どこ行くつもりだよ』 (え、まずサロンで髪とフットネイルしてもらって) 『それから?』 (新しい下着買って、服もみて) 『………………で』 (映画でも行こうかなって……) 『何観る気だ』  ここでラブコメだと言ったら、殺されそうだった。 (……すみませんでした) 『おう』  確かにこの予定なら、私ひとりで行った方がよさそうだ。どうして彼に声をかけようなんて思ったのか、今更恥ずかしくなってきた。私の動揺が透けて見えたのか、哀れむような口調で辰巳が言う。 『お前でも、心細くなるんだな』 (そうね……) 『でもな、悪いことは言わん』  ひとりに慣れとけ。  そう言い置いて、辰巳は気配を消した。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加