君の死体の片付けなんて

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 気づいてみれば、確かにと思う点をいくつか思い出すことができた。それにしても、まさか私が恋に落ちてしまうとは。驚きだった。  恋の存在は、幼い頃から知っていた。  よく村のお姉さんたちが、突然いなくなることがあった。でもたいていは、学校の校舎裏や、隣村との境、もう使われていないバス停辺りに空いた穴の中にいるところを発見される。  穴の中のお姉さんたちは皆、どこかふわふわとした空気をまとって、上から見ているだけでも目がうっとりと潤んでいるのがわかったし、赤らんだ頬のせいか、それまでよりも綺麗に見えた。  穴に入ってみたかったが、よく大人たちに止められては連れ戻されてしまったものだ。仕方なく私は、穴の上からお姉さんを観察し、恋に落ちるってどんなものかと尋ねた。すると、どのお姉さんも似たような答えをくれた。 「いいものよ」  と。  当時は、その曖昧な答えに納得できなかったが、そんな私でも、ついに落ちることができたのだ。素直に嬉しかった。  改めて、自分のいる場所を見回してみる。穴は、私の住む部屋とそれほど変わらない広さだった。土の中のはずなのに、なぜか一ヶ所、ドアノブのようなものがついている。試しに回してみる。扉だった。手前に開く。ああ、なんだ、そういうことか。バス、トイレつきの穴だったのだ。いくら恋に落ちたとはいっても、人間としての最低限は忘れるなという啓示に思えた。  見上げても、屋根はない。穴からは、小さくても清々しい青空が見える。  暑さも、寒さも感じない。むしろ、ほんのりと温かい心地さえする。これが、恋というものなのか。こんな気分は初めてだった。  せっかくなので、しばらく恋の中で楽しんでみようと思い、生活に必要なものを調達することにした。 「もしもーし。おじいさーん」  近くにいてくれているかどうかはわからなかったけれど、穴の外に向かって声を上げてみた。声は周りの壁に反響し、するすると空へ吸い取られていくようだった。  ややあって、 「どうしたのぉ?」  と、知らない女性の声が降ってきた。
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