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建付けの悪いドアは結構力を入れないと閉まらなくて、怪我をした両手で閉めるには確かに面倒かもしれないなんて、俺はそんな事を思いつつなんとなく声をかけた。
「劉…? 大丈夫?」
大丈夫かと聞いたところで返事のしように困るよな…と、気付いたところで吐き出した言葉は飲み込めず。変な事を聞いてしまったと謝る俺の耳に、劉の涼やかな声が届く。
「他人の世話をする事になど慣れていないだろうお前に頼むのは、些か酷かとな。不自由である事は確かだが、どうにかならない事もない」
「何かごめん…」
要らない事を言ったと俺が小さく謝れば、劉の揶揄うような声が聞こえてくる。
「兄に頼まれた仕事を全うしたいと言うのなら、止めはしないがな」
「う…っ、てか、劉こそそういう…なんつーか…世話焼かれ慣れてんの?」
「まあ、お前が思うほど羞恥心や罪悪感を感じない程度には」
劉の返事を聞けば、中国人だけどやっぱり兄貴と関係があるのかなー…なんて、思ってしまう訳で。
だってほら、よくヤクザの人って付き人みたいな人に背中流してもらったりしてるイメージが俺の中にはある。まあ、実際のところはどうなのかなんて知らないし、知ろうとも思わないけれど。
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