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返事をしたもののそれ以上話す事もなくて、気まずい沈黙が流れる。
「ぁああと兄貴、俺の仕事って…ホントに大丈夫…なの…? クビになったりしない?」
『大丈夫だ。若から直接、店のオーナーに話が行ってるからな』
―――若!!
「あ…そう? そ、それならいいんだけど…ははは…っ」
乾いた笑い声しか出なくて、俺は静かに項垂れる。
俺から掛けたはずの電話は、忙しいからと言った兄貴の方から切られた。いやまぁ…分かってはいた。分かってはいたんだ…。兄貴の…兄貴がヤクザだなんて事は。
だからといってそう何の躊躇もなく”若”なんて言われたら、やっぱり一般人の俺としては怖さ半分、近寄り難さ百パーセントなんだって…。
―――劉も…ヤクザなのかなぁ…やっぱ…。
そうでなければあんな怪我を負うなんて事、そうそうないのは分かってる。でも、近頃のヤクザというのは中国人も手下にしてしまうんだろうか。謎だった。
―――兄貴が世話してるって事は…そうなんだよな…きっと…たぶん…うん…。
正直、あんな綺麗な人がヤクザだなんて信じられない。顔は関係ないって言われたらそれはそうなんだけど、物静かで、穏やかで、優しそうで…。
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