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劉の言葉に片手をついて台所を覗き込めば、確かに何やら置かれている。
「じゃあ劉もまだなんだ」
「ああ」
「それじゃ用意してくるね。すぐ食べれるよな?」
返事の代わりに劉が柔らかく微笑んで、俺は顔が熱くなるのを自覚した。すぐさま立ち上がり、逃げるように台所へと移動する俺は、劉には気付かれなかっただろうかとそればかりが心配だった。
兄貴が用意した朝食は白飯に味噌汁、それに目玉焼きという簡単なもので、用意といっても大した手間でないのが有り難い。正直な話、俺はあまり家事が得意じゃないから。
一応言い訳をさせてもらえるのなら、春先まで実家暮らしだった男が家事なんて得意なはずがない…。
味噌汁とご飯をよそい、フライパンに乗ったままの目玉焼きを少しだけ火にかけて皿へと移す。お盆とかトレーとか、そんなのが見当たらなくて何度か台所を忙しなく行き来するのが面倒だったけど、嫌になるほどじゃなかった。というよりそれが、俺が兄貴に頼まれてる事だから。
「いただきまーす」
「いただきます」
劉用にスプーンとフォークを用意したものの、やっぱり食べにくそうで見てるこっちが痛々しくなってくる。
「昨日も思ったけど…食べにくそうだよね…」
「そうだな」
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