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だから俺は兄貴の性格なんて全く知らないに等しく、兄貴の職業が所謂頭にヤの付くその筋の人だという事も、つい二カ月前、偶然知ったばかりだった。しかも、バイト先で。
ともあれ、場所は後でメールするという兄貴に大人しく返事をした俺は、回線の切れた電話を見つめてひとり項垂れた。
まだ朝も早い時間だというのにすっかり目が覚めてしまって、とりあえずシャワーを浴びる事にする。
そう広くはないワンルーム。数歩けば狭い廊下がある。右手のキッチンと向かい合った壁にある引き戸を開け、風呂とトイレのドアが向かい合った脱衣所へと入った。
就活真っ最中の仲間内でも、有名企業かどうかなんて拘りがない俺は最速で内定を貰った。ついでに、大学を卒業するまではアルバイトとして雇ってくれるというので、それまでやってたコンビニのバイトを辞めたのがかれこれ三カ月くらい前。
そんな俺の現在の就職先兼バイト先は、何を隠そうホストクラブだ。といっても、俺は別にホストじゃなくて、ただの裏方。所謂ボーイと言われる仕事。
ホストクラブなんて言うと、なんとなくブラックなイメージが付きまとう仕事だけど、俺のバイト先はまったくそんな事はない。まあ、働く時間は深夜帯がメインだけれど。
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