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透明なビニール袋に入った先の割れたプラスチックのスプーンを取り出して、適当に混ぜたタコライスを掬って口許に差し出す。
「ありがとう。いただきます」
「う、うん…」
俺が来た時と変わらず嬉しそうな顔のまま微笑む劉は、いつにも増して綺麗だ。だけど、それって俺に向けられたものじゃない。
結局、微妙な心持のまま帰宅した俺は、ベッドの上にドサッと倒れ込んだ。
―――なんも聞けなかったなー…。
そう。情けない事に、俺は劉に何も聞けなかった。
―――兄貴に聞いたら…何か分かるかな…。
正直言って、劉のあの顔は絶対好きな人に対するソレだと思う。だってマジで恋する乙女っぽかった。
髪が長くて美人な劉は、男だけど本当に乙女っぽくて…っていうか、艶があるって言うか…、色っぽいって言うか…、とにかくそんなの。
直接劉に聞けないくせに、どうしても気になる俺は、定位置である枕元に放り投げてあるスマホを取り上げた。
耳に流れ込むコール音を聞いてると、なんだか悪い事をしてるような気になってくるのは何故だろう。劉の事なのに、本人じゃなく他の人に聞くのはやっぱりフェアじゃないからか。どうにもいたたまれなくなって、俺は兄貴が出る前に電話を切った。
「情けな…」
ボスッと枕に突っ伏して呟けば、くぐもって余計に情けなく聞こえる声。
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