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「大丈夫だ。厚手のものがなくなっただけでも充分助かっている」
「ホント…?」
「ああ。むしろ見苦しいさまを見せてしまって私の方が謝りたいくらいだよ」
言いながらあっさりと個室の中へと入って行ってしまう劉に、俺は慌ててドアを閉める。
「ざっ、座敷にいるから終わったら声かけてっ。そ、その…スウェットあげるし…っ」
「分かった」
落ち着いた声が聞こえて和室へと戻った俺は、畳の上に両手をついて項垂れた。
―――俺の馬鹿…っ。
下心がありつつも、いざとなると恥ずかしくて手が止まってしまう自分のヘタレ加減が恨めしい。挙句の果てに劉に慰められるなんて、情けないにも程があるというのだ。
―――絶対呆れられてる…。
というか、完全に変な奴だと思われてるような気がしてならない俺だ。いや、気がするどころか確実に思われてる自信がある。
それって好きとかそれ以前の問題じゃないかと思えば凹む以外にない訳で。もはや劉に想い人がいるとかそんなのを気にしてる場合じゃない。
意識すればするほど墓穴を掘るような気がしてどうしたものかと考え込んでいれば、劉の声が聞こえてくる。
「要、悪いんだが…」
「今行く」
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