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だからといって決められた時間以外に残業なんて殆どないし、休みだってちゃんと貰える上に給料も結構良い。下手をしたら大手の飲食チェーンなんかより待遇が良いくらいじゃなかろうか。
そして忘れもしない二カ月前。今のバイト先に移ってちょうど一カ月くらい経った頃、俺は偶然兄貴に会ったのだ。店のオーナーと、その知り合いのヤクザの親分さんとともに、兄貴は一緒に居たのである。しかも兄貴は親分さんの付き人みたいだった。
―――頼み事って何だろ…。
兄貴の事は嫌いじゃない…というより、嫌えるほど性格も知らないし、接点がないのだけども…。出来れば俺は平穏無事に人生を生きていきたいタイプな訳で。兄貴には悪いけれど、なるべくだったらヤクザなどとは関わりたくない。
―――って、はっきり言えれば苦労はねぇよな…。
兄貴がヤクザだったという事を知っても、これまで通りの付き合いならば何の問題もないと思ってた。俺の職場と兄貴の組は確かに関係があるけれど、俺と兄貴個人の繋がりは皆無に等しかったから。
現にこの二カ月は、何の連絡も話もしてないし、顔を合わせてもいなかった。…なのに。
◇ ◇ ◇
スマホの地図アプリを片手に辿り着いた二階建ての小さなアパート。綺麗に整備された表通りからは想像も出来ないほど細い路地を入ったところに、その建物はあった。
「ボロ…ッ!!」
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