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今度こそ! と、妙な気合を入れて立ち上がった俺は、相変わらずミシミシと軋む床を踏みしめて暖簾をくぐった。
「手間をかけさせてすまない」
「ううん。俺の方こそ…さっきはごめんなさい…」
「気にするな。面倒を見てもらっているのは私の方だ」
そう言って微笑む劉はやっぱり綺麗で、俺は取り返しのつかないところまでのめり込んでる事を知る。
和室に戻っていつもの場所に腰を下ろすと、落ち着く気がするから現金なものだ。まあ、だからといってやらかした事が消えた訳じゃないんだけれど。
小さなテレビを点ければちょうどCMが流れていて、ハヤトさんが映ってた。
「あ…」
「うん?」
「ああ、ハヤトさん出てたから」
「ハヤト…。ジュエリーブランドのモデルか」
劉の言葉を聞けば、やっぱりハヤトさんは凄い人なんだなって思う。うちのホストクラブでも売り上げは常にナンバーワン。同伴もアフターもしないけれど、本職がモデルなのを思えばそれも当たり前かと思う。
「この人、うちの店のナンバーワンなんだよね」
「店って、この間言ってたバイト先の?」
「そそ。ホストクラブ」
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