恋、しちゃいました。

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 そのCMはすぐに終わってしまったけれど、幾つか違うCMを挟んで今度は違う企業のCMにまたハヤトさんの姿が映った。ホント、こうしてみてるとハヤトさんって、見ない日はないってくらい売れてるモデルだ。  ハヤトさんがうちの店で働いてるのは副業というよりは趣味らしいけど、それでも同じ場所で仕事してるって思うだけでちょっと自慢できるし、実際俺がバイトを始めてから大学でも羨ましがられるくらいだった。 「凄くない? 毎日見ない日はないってくらい人気のトップモデルと仕事してるって、大学でもよく羨ましがられるんだよね俺」  俺のささやかな自慢の一つ。 「あっ、でも別に俺ハヤトさんが目当てで今のバイトしてる訳じゃないからね!?」 「須藤…甲斐…」 「え?」  突然オーナーの名前を呟いた劉に、俺は思わず躰を強張らせた。だって、須藤さんがうちの店のオーナーだって事は、店長と内勤者くらいしか知らないはずだ。それとも劉は、個人的に須藤さんを知ってるのだろうかと思いかけて、俺は重大な事実をすっかり忘れている事に気付いた。  ハヤトさんの所属してるモデル事務所のオーナーも、須藤さんなのだ。しかもそれって、須藤さんの本業の方。そりゃあ劉が知っててもおかしくない。だって、須藤さんが会長をしてるSDIグループって、はっきり言って日本で知らない人はいないんじゃないかってくらい大きい。     
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