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そう思えばなんだか気分が楽になった俺だったけど、劉の顔を見て思わず開きかけた口を閉じた。
―――え…? 何…?
今までに見た事がないくらい、真面目な顔をした劉がそこには居た。真面目っていうか、なんだか怖い。じっと両手を見つめる劉を俺は黙ってみてる事しか出来なかった。
―――あ…、なんか…寂しそう…? いや、苦しそう…。
実際劉が何を思ってるのかは分からないけれど、その横顔は怒ってるとかじゃないのだけは分かる。寂しいとか、苦しいとか、痛いとか、そんな感じの顔だ。
けど俺にはどうして劉がそんな顔をするのかが分からなかった。須藤さんと、劉の両手の怪我は何か関係してるんだろうか。
じっと両手に視線を落とす劉は辛そうで、俺は考えるよりも先に躰が動いてた。
「要?」
「ごめん。でも…なんか辛そうで見てられなかったから…」
驚いたような声を劉があげたのは、仕方がない事だと思う。誰だって急に抱き締められたら驚きもする。でも俺は、それが良いとか悪いとか考える前に動いてて。いつもだったら慌てて手を放すんだろうけど、今は離したくなかった。
「俺、劉の事何も知らないけど、辛そうなのは…分かるから…」
「そうか」
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