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「要。だからそんなに自分を卑下するものじゃない。謙遜は日本人の美徳かもしれないが、私には過ぎているように見える」
「あ…はい…」
まさかの説教に、俺は何も言い返す事も出来ずにただ俯いた。
―――どうして好きな人がいるかどうか確かめようと思ったのに説教されてんの俺!?
と、そこまで考えて俺は、劉が中国人だという事実に気付く。そう、劉が言った通り、国が違えば考え方も違うのだ。
「お前はいつも自分が悪いと思い込む。私は、お前に癒されてるというのにな」
「えっ?」
「一生懸命世話を焼いてくれるお前に、癒されないはずがないだろう?」
「そっ、そう…?」
―――ヤバい。今の俺絶対顔赤い。
そう分かるくらいに、心臓バクバクいってる。てか俺、声上ずってる。嬉しすぎて泣きそうになってる。
劉の気持ちが恋愛感情じゃなくっても、もういいかなって、この時俺は思った。だってそんなのなくたって、劉はこうして俺に優しくしてくれて、俺の事ちゃんと見てくれてる。それだけで良いんじゃないかなって。
「うん。ありがと、劉」
なんだか吹っ切れてしまった俺がそう言えば、劉は優しく微笑んでくれた。
そのあと少しだけ当たり障りのない話をして、テーブルを退けて布団を敷いたのだけれども…。
「え? 布団…一組しかないの…?」
「そのようだ」
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