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「日本人というのは分からんな。そんなに、体面が大切か? 自分の嫌な事を我慢してまで取り繕いたいものなのか? しかも泣いてまで」
頭を、殴られた気がした。これ以上、何を言っても取り繕っているだけにしか劉には聞こえない。そう、分かったから。
違うって、言いたいけれど言ったところで信用されないだろう。もし、信用してもらいたいと思うのならば、最初から全部話して、俺の気持ちまで伝えなきゃならない。
泣きそうになってた涙なんて引っ込んだ。
悔しくて、悲しくて、切なくて、ムカついて、こんな気持ちになったのは初めての事だった。
でも劉の言ってる事が分からないほど子供じゃなくて。だからこそ本当に劉が好きならちゃんと誤解を解かないといけないって、頭では分かってる。分かってる…けど…。
―――言えない…。
好きだから嫉妬しましたって言うのは簡単だ。きっと劉も分かってくれる。今この場の誤解は解くことが出来る。
―――でも、その後は…?
きっと長い時間を過ごせば過ごすだけ、俺と劉の考え方とか、性格とか、色んな物の見方とか、感覚のズレみたいなものは出てくるはずで。それを『好きだから大丈夫』なんて安易な気持ちで考えたらいけないんだとそう思う。
だってこれは、ハッピーエンドが確定してるお話の世界じゃない。
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