恋、しちゃいました。

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「ごめん。本当に、そんなつもりじゃなかったけど…、たぶん今俺が何言っても劉には分かってもらえないと思う。劉が…言ってる事も、分かるから…。でもやっぱ、劉に体面が気になるかって言われても、劉の事そんな場所で寝かせたくないから…今日は帰るね。ちゃんと、布団で寝て」  ほんの少し前の、ぽかぽかした気持ちなんてどこにもなかった。  気持ちがあれば何でも乗り越えられるなんて綺麗事が言えるほど、俺は大人じゃないし、純粋でもない。  弱くて、卑怯で、姑息で、子供で、でも本気だって事だけは確かで。  劉が何も言ってくれないのは、呆れてるからなんだろうと思うけど、今はそう思われてもいいやって、俺は立ち上がって部屋を出た。  ―――鍵…、ちゃんと閉めるように言えばよかった…。  思ったところで再びドアを開ける勇気は俺にはなくて、大通りまで出たところで原付のエンジンをかけた。   ◇   ◆   ◇  翌日。今日は一日中講義があって、それを兄貴に言えば家にいるから大丈夫だと返された。昨日帰った理由なんかを何も聞かれないところをみれば、劉が適当に取り繕ってくれたんだろうと思う。  午前中の講義を終えて構内の食堂で昼ご飯を食べていれば、後ろから肩を叩かれた。 「なんやエラい暗い顔してどしたん? 女にでもフラれたか?」 「間宮…」     
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