81人が本棚に入れています
本棚に追加
バシバシとものすごい勢いで背中を叩いてくるこの男は、間宮祐樹(まみやゆうき)。どうしてもこの大学にいる教授の講義が聞きたいと、関西から上京してきたという変わり者だ。
「別に女になんて振られてないよ」
「したら何でそんなこの世の終わりみたいな顔してん」
そんなに暗い顔をしてるだろうかと思わず自分の顔を触る俺の隣に、間宮が腰を下ろす。
「悩みがあるなら聞くで?」
「悩みっていうか…、ちょっと考えたい事があるだけだし…」
「アホか。それを悩みっちゅうねん」
呆れたように言われてしまえばそれもそうかと納得するしかなくて。だからといってそう簡単に打ち明けられる内容じゃない俺としては、誤魔化すように間宮に笑ってみせる。
「誰かに相談しないと解決できないような悩みじゃないから大丈夫だよ。それよりお前、自分の就活の心配しろよ」
「うぐ…っ、要らん事言うなや」
がっくりとテーブルに突っ伏してしまった間宮に苦笑を漏らし、俺は食べ終えた食器を手に立ち上がった。これ以上、誰かと話していたい気分じゃない。
「食べ終わったから俺行くよ? 就活頑張れよ!」
ぽんぽんと背中を叩きながら言えば、奇妙な呻き声を上げながらも間宮が手を上げる。どうやら俺の気持ちを分かってくれたらしい。気にしてくれはするけれど、あまり突っ込み過ぎないところが間宮の良いところだ。
最初のコメントを投稿しよう!