恋、しちゃいました。

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 落ち着いたら間宮に飯でもおごろうと心に決めて、俺は食堂を後にした。  一日っていうのはこういう時ほど早く過ぎるもので、あっという間に最後の講義が終わってしまった俺は、どうしたものかと時計を見る。今日は兄貴が一日中いるって言ってたし、きっと呼び出される事はないだろう。と、そう思った瞬間に電話が鳴って、嫌な予感に俺は眉を顰めた。案の定液晶には兄貴の名前が浮かんでて、電話を取るのを躊躇う。  けれどもやっぱり無視する事も出来ない俺は、恐る恐る通話ボタンをスライドさせた。 「はい…」 『要か。今、少しいいか』 「え…? うん…大丈夫…」  てっきり仕事で出掛けるからと呼び出されるものだと思っていれば、なんだか様子が違くて。兄貴の声は、いつもよりも固い気がした。 『お前、昨日劉と何かあったのか』 「ぇあ!? あ…うん…ちょっと…」  呼び出しどころか核心ど真ん中を突かれて変な声を出してしまった俺は、誤魔化す事も出来ずに口籠る。呼び出しを何と言って断ろうかと、そればかり考えてた俺は、言い訳なんて考えてもいなかった。 「何か…あったの…?」 『世話はもういいと、出て行った』 「え?」 『やっぱり何も聞いてないんだな』 「うん…」     
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