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兄貴は『悩むにしては長すぎだな』って、そう言って笑うけど、正直まだ、俺の中で答えが出た訳じゃなかった。けど、取り敢えず話をしたい。会って、ちゃんと気持ちを伝えたい。悩んでた事も、何もかも。
大学は長期休暇に入り、バイト三昧の日々を送りつつも俺はその日、間宮に誘われて買い物に出掛けてた。CDショップを覗いて、服を見て。昼ご飯を牛丼屋で食べながら映画かカラオケかとこの後の話で盛り上がる。
結局、観たい映画がないと、そういう話になってカラオケに行った俺と間宮は、数時間ストレス発散をして外へ出た。
「あー、久し振りに歌ったわー」
「俺も。最近仕事忙しくて」
「久々の休みやって言ってたもんな」
就活に苦しんでた間宮はようやく内定を貰えたらしく、このところ上機嫌で、俺も一緒になって喜んでいた。晩ご飯はどうしようかなんて話しつつ街中を歩いていた俺だったけど、不意に視界の端になびく黒髪に目を惹かれて立ち止まる。
「どしたん?」
「ごめんっ。ちょっと探してた人見つけたかも!!」
「は? え?」
「埋め合わせは今度する!!」
言いながら、俺はすでに走り出してた。長い黒髪なんてそのへん見回せば幾らでもいるけれど、その人が着てたのはメンズのスーツだった。男で、腰まである黒髪なんて、そうそう居ないはずだ。
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