恋、しちゃいました。

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 人で溢れかえる歩道を急いでその人がいた場所まで走ったけれど、残念ながら見失ってしまう。それでも、近くにいる筈だと思えばどうしても諦められなくて、俺は辺りをきょろきょろと見回しながら歩き回った。  ―――確か…こっちの方向向いてた気がするんだけど…。  その人が劉だったかどうかなんて確信はない。夕方で辺りも暗くなってきてたし、ほんの一瞬だけ見えたのは、なびく黒髪と、その人が男物のスーツを着てた事だけ。でも、どうしても気になったんだから仕方がない。人違いだったなら、それもそれで仕方がない。ただ、何もしないままでいるのだけは嫌だった。  一本路地を入れば表通りの華やかさが嘘のように思えるほど人通りが少なくなる。そんな場所で、通り過ぎた路地に気を惹かれて戻ってみれば、長い黒髪が奥の角を曲がるところだった。間違いなく男物のスーツだ。  劉かもしれないと、そう思った瞬間、俺は全力で走り出してた。ここまで来て見失うなんて、絶対に嫌だ。  人違いならそれでいいと、そう思いながら目指していた角を曲がれば、少し先にその人は立っていた。  ―――誰かと…話してる?  ここまで来ておきながら、まだ後ろ姿しか見えなくてその人が劉だと確信が持てないでいた俺だったけど、それは二人が動いたことで確信に変わった。  ―――劉だ!!     
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