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でも、正直喜んでる場合じゃない。だって、劉の腕を、もう一人の男が掴んでる。しかも劉よりも背が高いその人は金髪で、明らかに日本人じゃなかった。でも、どうしてもそのままにしておく事も出来なくて。
「劉…っ」
思い切って名前を呼んでみれば、劉が振り返る。その顔は険しかったけれど、間違いなく劉だった。もう一人の男は、金色の髪に碧い目をした外国人。しかも兄貴と同じくらい背が高くてガタイがいい。
「劉の…知り合いなの? 嫌がってるように見えるけど…」
「要。今すぐここから離れるんだ」
「嫌だ! せっかく劉に会えたのに!!」
離れろと言われても、また劉がいなくなるのが分かってるのに、離れられる筈もない。縋りつくように劉の背中に張り付けば、俺には意味の理解できない言葉が聞こえてきた。多分発音からして中国語。それを喋ってるのは、劉じゃなくて金髪の男だった。
『随分可愛らしい子だね、劉。キミの恋人かな?』
『違う。この子は私とは何の関係もない』
『関係も何もないのにそんなにキミに縋りつくはずがないだろう? 嘘は、好きじゃない』
何を話してるのかは分からないけれど、金髪の男はさっきから楽しそうに笑ってて、劉はなんだか怒ってるような感じだった。俺が口を挟んでいいのかどうかも分からない。
『私はどうでもいい。けどこの子は返してやってくれないか。私たちとこの子は違う。本当にただの一般人だ』
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