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「いや、うん。大丈夫…だけど…頼みって何…?」
「中で話す。入れ」
出てきた時同様、ゆっくりと頭を下げて部屋の中へと戻った兄貴の後について玄関へと入った。
「お邪魔しまーす…」
外見に負けず劣らず部屋の中も古臭いけれど、掃除が行き届いているのか床や壁は思ったよりも綺麗な気がする。それに、玄関の横にある台所も。
靴を脱いで床の間に立てば、それだけでミシッと床板が音をたてた。予想はしてたものの、予想外に大きなその音に思わずびびる。
「兄貴…。こっ、これ…床抜けない…?」
「大丈夫だろ」
「そ…そう…?」
そろりそろりと足を踏み出すたびにミシミシと床板が軋む。それだけならまだしも、微妙に床板が沈むものだから心臓に悪い。奥の部屋へと入ってしまった兄貴が歩いてた時はひとつも音なんてしなかったのに、何で俺が歩くとこうなるのか不思議でならないのだが…。
台所のある床の間の奥は、和室だった。どうやら部屋はその二つだけらしく、六畳ほどの和室には小さなテーブルがちょこんと置かれてた。
その横に、兄貴の他にもう一人。長い黒髪の頗る綺麗な人が座ってて、思わず目が釘付けになる。こんなボロい部屋には似つかわしくないほど、その人は美人だった。
「あの…?」
「まあ座れ」
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