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『ただの一般人…ね。キミは本気で、僕が何も知らないとでも思ってるのかい?』
不意に金髪の男が、劉の腕を掴んだまま後ろにいる俺を覗き込んでくる。その顔は笑顔だったけど、何だか俺には恐ろしく見えた。
「ねえキミ、キミの名前を教えてくれる? 僕は、フレデリック。劉の…そう、知り合いかな」
クスクスと可笑しそうに笑いながら俺に向けられたのは、外人っぽい訛りも何もない日本語。どうやらこの男は、フレデリックという名前らしい。けど、向こうに名乗られたからって素直に答える気になれなくて、思い切り俺はフレデリックに不信感をあらわにして問いかける。
「何で…俺の名前なんて知りたがるんですか…?」
「劉が教えてくれないから」
そう言って、フレデリックって名乗った男はまた笑った。何が楽しいのか分からないし、劉はピクリとも動かないし、俺にはどうしたらいいのかも分からない。ただ、名前を教えろって言われても、素直に教えたくなるような雰囲気じゃない事だけは確かだ。
けど、そんな俺の考えは、あっという間に打ち砕かれた。
「劉が警戒してるから教えたくないんだね。設楽要クン?」
「何で…」
「残念だけど、僕はキミのお兄さんの事も知ってるし、お兄さんのファミリーのボスも、仲が良いんだよ?」
「嘘だ…」
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