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俺の怒鳴り声なんて聞こえてもいないように、劉の躰をあっさりと突き飛ばしたフレデリックは、床にくずおれた劉の猿轡を片手で外した。
「ほら劉、どうしてこんな事になってるのか、ちゃんと教えてあげたらどうだい?」
「っぅ…、私は…どうでもいい…。頼むから…この子だけは…帰してやってくれないか…」
「駄目だよ劉? 僕はおねだりが聞きたいんじゃない」
そう言って劉のすぐそばにしゃがみ込んだフレデリックが、剥き出しにされた劉の肩をゆっくりと抱き寄せる。それだけで、劉がビクッて全身を強張らせるのが俺にも分かった。いったい、このフレデリックって男は何者なんだろうか。明らかに劉が怯えてる。
「ねえ劉、お利口なキミなら、僕の言ってる意味はわかるだろう? あの子に、どうしてキミがこんな姿にされてるのか、ちゃんと教えてあげないと。安心して帰ってもらうためにも、ね」
ゆるゆると首を振る劉が痛々しくてどうしようもない。
何かを考えるよりも先に、俺の口は勝手に動いてた。けど…。
「嫌がってんだろッ!! 劉から離れろよ!!」
「大丈夫だ…っ、要。私は…大丈夫だから…、これは…私が望んで…っ。……お前を巻き込んで…本当にすまない」
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