恋、しちゃいました。

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 明らかに怯えてるのに、自分が望んでるなんて絶対嘘だって分かる。分かるのに、劉にそう言われてしまったら、俺は何も言えなくなった。殴る蹴るなんかより、もっと酷い暴行を、劉が受けてるのだけは確かで。  どうにか助けたいのに、俺は動く事もままならなくて、フレデリックを精一杯睨んだ。 「そんなに僕を睨まないでくれるかな? 僕は劉との約束を果たしてるだけで、何もキミを苛めている訳じゃない」 「何の…約束だよ…っ。こんな…っ、こんな酷い事…ッ」 「そうだね。酷いよねぇ…、ねえ劉? 酷いって言ってるけど、キミは、もっと酷い事をしましたって、あの子に教えてあげた?」  フレデリックが言葉を投げかける度に、劉は俯いて、小刻みに首を振る。言葉には出さなくても、それが『やめてくれ』って、そう言ってるのが分かって、だからこそ俺は、フレデリックが言ってる事が本当の事なんだって、そう気付いてしまった。でも。 「違う…劉には…きっと事情があって……、それで…そんな…お前とは…違…っ」  あまりにも、俺にはショックが大きすぎた。  俺には何がどうなってるのかなんてさっぱり分からなくて。でも劉だけは信じたくて。全部フレデリックの嘘だって、そう思いたくて…。 「そうだなぁ、劉がした事を、今ここで僕がしてあげようか? そしたら、彼もキミが何をしたのか理解してくれるよね」     
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